東京エスメラルダ

オトナによるオトナだましぃな日記 @田舎

【IL DIVO】R.I.P. Calito,海を越え年齢を超える推し活の世界。

特別お題「わたしの推し

 

もう10年以上前のこと、IL DIVOという四人組の男性カルテットに出会いファンになりました。彼らはアメリカ・フランス・スイス・スペインの多国籍グループで、声楽の発声でポップスやオペラ・ミュージカルナンバーを歌い、英語やフランス語やスペイン語などで歌い分けることもできるため全世界で活動しています。

ソニーミュージック公式プロフによると

2004年11月のデビュー以来、これまでのアルバム・トータル・セールスが、全世界で2,600万枚以上を記録し、ナンバーワンを50回以上獲得し、33ヶ国以上でゴールドまたはプラチナ・ディスクに160回認定され、画期的なワールド・ツアーを4回にわたって行ってきた。

日本でも当時オリジナルソングが1曲スマッシュヒットし日本のファンも多いことから、度々来日し朝の情報番組などにも毎回出演しているので、聞いたことあるわ〜という方もいらっしゃるかもしれません。興味を持たれましたら動画サイトなどで聴いてみてください。

 

たまたま知り合いになった人が熱狂的なファンで、余ったライブチケットを譲ってもらったのがきっかけでした。日本ではファンの年齢層が高めで、中心はアラフォー以上。知人も50代半ば、知人が紹介してくれたファンさんたちも60代70代が多くいました。親ほど年の離れた人と一緒に遊ぶ経験などしたことがありませんでしたが、好きなものを共有しキャッキャと戯れる幸せな時間に年齢など関係ないのだと知りました。

海を越えてもファンならば言葉の壁は乗り越えられてしまいます。新譜ではどの曲が好き?次は誰々がゲストに来るかもって知ってる?帰り道はTAXI必須よまだなら私の予約に1台追加してあげましょうか?今夜はどのメンバーの近くの席なの?その素敵なドレスならきっと彼と目が合うはず!などなど、初対面のブラジル人キャビンアテンダントとNYのカフェで盛り上がれる。そして、次のツアーでアジアのどこかへ飛ぶからまた会いましょうね!と。

そうやって、今までの自分なら絶対に交流することもなかったし会うこともなかった人たちと同じ時を過ごして幸せを分かち合うのです。ああ、こんな世界知らなかったな。推しというカテゴリーで交流すると世界が上下左右で一気に広がりワープする感覚。好きなものを共有できる繋がりって何倍も幸せを生み出すんだなって思いました。

 

また「推し活」自体が私にとっては新鮮な世界でした。さほど売れていない頃から長く応援しているファン、ガラガラの後ろの席を自己負担してでも満席にしようとするファン、ありとあらゆるグッズを買うファン、極寒の地でもきちんと並んで出待ちをするファン、日本国内のすべてのライブ会場に駆けつけるファン、アジア規模で海を越えて遠征するファン、太平洋も超えるファン、喉の調子が悪そうと差し入れにのど飴を入れるファン、音を外しても精一杯の拍手を惜しまないファン・・・推し活とはなんと尊いのでしょう!

熱しにくいタイプの私は何かにハマったことがありません。新譜が良ければ買うしTVに出ていたら観る程度で、若い時に好きだったアイドルも下手なお遊戯を応援したいとか割高でもブックレットがついてるCDを買いたいとか思わなかった。でもコアなファンの心理を初めて間近で見て、良い時も悪い時も全てを受け入れる人がいてパフォーマーも成長していくのだなと感じました。そうしてそのような良いファンが多いパフォーマーは、ファンサービスも熱心でスキャンダルも起こさず本業にでしっかり実績を残し大きな成功を収めるのだと思いました。

 

最後に、4人のメンバーの中でも私はスペイン人のカルロス・マリンがお気に入りです。彼は素晴らしいバリトンボイスの持ち主で、歌声には張りと艶がありました。私は推しのルックスとか私生活にはあまり関心がなく、発せられるその声と歌にひたすら酔いしれるスタイルのファンです。彼らが歌った多くの中で1曲だけ好きな曲を選ぶとすれば、IL DIVOのクリスマスソングアルバムの中から、讃美歌「O Holy Night」を選びます。

私はある時期とても辛く苦しい日々を送っていました。心の平穏を得るために毎晩イヤフォンをして音楽を聴きながら眠りについていました。O Holy Nightでカルロス・マリンが歌うパート、2回目のサビの部分 Christ is  the Lord...は圧倒的な荘厳さがあり、私は英語も讃美歌の真の意味もわからず信仰も持ちませんが、ただその声が放つ光が満ちたような清浄さの中で安らぎを覚えていました。あらゆる歌手や合唱団が歌う同曲を試聴しましたがこのカルロスのパートを超えるものはありません。

 

残念ながらカルロス・マリンは2021年12月に新型コロナウイルスによって53歳でこの世を去りました。IL DIVOの活動はもちろんこれからも継続されることを望みますが、彼らのハーモニーにカルロスの声がもう加わらない事実をどう消化していけばいいか正直に言って私にはまだわかりません。彼の声はそれほどに力強く、カルテットをひとつの音として率いた存在であったからです。

私の世界を広げてくれたIL DIVOとカルロス・マリンの深い歌声にありがとう。

R.I.P.

Miss you Calito, and your little carl.